つばきの手が京の胸を強く推す。
しかし徐々にその力が緩む。その隙をつくようにして更に舌の動きを速める。
彼女の妖艶な声がそれを加速させる。
すっとつばきの足へ手を這わせる。
と、つばきの微かな声がみこの声にかき消された。

「京様、失礼します。中院翔様がお見えになっておりますが」

京が仕方がなくつばきから体を離すとみこがドアから顔を出した。
つばきは京の体が離れると直ぐにソファから離れるように立ち上がる。
みこは二人の様子を見て大きく息を吐いた後
「応接間でお待ちです」
と言って踵を返す。
直ぐに離れたとはいえ、つばきの髪は乱れているし顔も赤い。
何をしていたのか分かっていたのだろう。

「では…私はこれで、」

つばきは顔を伏せたまま部屋を出ていく。
つばきが出ていってからすぐに京も応接間へ向かうため自室を出た。
女中たちが若干騒がしく思えたのは翔が来ているからだろう。
翔はまだ結婚していないし、容姿も誰が見ても文句はないだろう。男前であるから女性にはよくモテる。
女中たちもアイドルを見るように翔が来ると浮ついているのだ。