京の部屋につばきを連れてくる。つばきは一体何の話なのだろうと不安半分、好奇心半分といった顔を見せる。

「とりあえず座ってくれ」
「…はい、」
革製のソファにつばきを座らせた。その隣に京が腰かけた。正面に京が座ると思っていたのかつばきは「え…?」とちいさく声を漏らした。

「何だ、ダメなのか」
「いえ…」
「お前から俺と出来るだけ一緒にいたいと言ってきたのに」
「そ、それは…」

直ぐに顔だけでなく首筋まで真っ赤に染める彼女を今すぐにでも抱きしめたくなるのをぐっと堪えた。

「以前ばら撒かれた紙の件だ。ようやく証拠が集まった」
「本当ですか」

京は深く頷く。実は以前より調べていたのだが、ばら撒いた“本人”が見つからなかった。
指示をしたであろう人物はある程度予想出来ていたが張本人を見つけなければ意味がない。
そしてその本人から指示された人物の名前を話してもらうのが一番早いのだが、そう簡単に口を割ろうとはしないことは予想できた。
そのため、客観的な証拠を集めていたのだ。

「つばきもだいたいは予想がついているのだろう」
つばきの表情が硬くなった。昔を思い出すのは辛いのだろう、太ももの上で拳を作りそれが微かに震える。

「それは…」
「西園寺家の清菜だ」
つばきが俯き下げていた視線を上げる。
つばきの手をそっと握った。

「来週中には西園寺家に行ってくるが、お前はどうする?」
「行くのですか」
「もちろんだ。付き合いのある家ではないが、つばきは元々西園寺家にいた。お前を妻にするというのであれば挨拶くらいは必要だろう」
「ですが…」
「大丈夫だ。清菜がもう二度とお前に接触出来ないようにする」

それでもつばきの顔色は変わらない。
何かを考えているようだった。

「ありがとうございます。清菜さんには昔から嫌われておりました。私の母がしたことで西園寺家の名を汚したという思いがあったのかもしれません」
「そうか。だとしてもやっていいことと悪いことがある。それくらい分別のつく年齢だとは思うが」

つばきは困ったように笑っていた。どうにかして彼女に降りかかる不幸をどうにかして取り払いたい。自分の元にいたら絶対に幸せにできる自信があった。
それほどまでにつばきは京にとって大切な存在だった。傍で笑ってくれたらそれで十分に幸せなのだ。
つばきと視線が絡む。数秒じっと見つめ合うと、我慢のきかなくなった京はつばきをそっと押し倒す。

「京様、」

慌てた様子のつばきの口をすぐに塞いだ。

「…っ…ぅ、ん」