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翌日
つばきはあの錯乱状態とは打って変わって笑顔を見せるほどに元気になっていた。
しかし問題が解決したわけではなかった。
みこにもつばきの様子は報告してもらってはいたが、彼女があの状態に陥った理由はわからないままだ。
なるべくつばきの傍にいようと思ってはいるが、仕事があるため一日中傍にいることは出来ない。自分のいないうちに屋敷から出ていってしまうのではないかと不安になる。
だから無理をしてでもこの日は早く屋敷に帰った。

「今戻った」

玄関の扉を開けると直ぐにつばきが視界に入った。
彼女は京がプレゼントした着物を着て前掛けをしている。
家事の途中のようだ。
つばきは京を見るやすぐにどうしてか安堵したように胸を撫でおろし、近づく。

「おかえりなさいませ、今日は普段よりも早い帰宅ですね」
「そうだな。お前が心配で仕方がないんだ」

京はそう言ってつばきの頭を撫でる。
つばきは京を見上げぽっと頬を赤く染めた。つばきは誰から見ても表情が分かりやすいだろう。
「大丈夫です。もう元気になりました。ただ…お願いがあります」