side京

医者を呼んでもらったが特段異常なところは見つからなかったようだ。
つばきを彼女の部屋ではなく、京の部屋で寝かせていたのは何かあればすぐに対処ができるようにという京の優しさからだった。
みこもつばきの様子が心配なようで医者が帰った後も何度も京の部屋を訪れていた。

「急に…ということですよね。でも特段おかしなことはなかったのに…何故?」
「それは俺も分からない。朝目覚めたときもおかしな様子はなかった。ただ、つばきは緋色の目で俺を見ていいかと許可を取った。そのあとに実際に彼女の瞳が緋色に光るところを見たんだ」
「…あの目の噂は…」
「呪われているというのは嘘だ。つばきもそう言っていた。だが、理由なしにそれが光るわけではないらしい。どうやら…何か別の力があるようだ。俺も当初からそう思っていたが別の能力が何なのかがわからなかった。本人が言いたがらないのに深く追及するのも違うだろう」
「ですが、つばきさんはその目で京様を見た瞬間、大きく取り乱した…ということなのですよね。であればその理由がわからなければ彼女に何があったのかもわからないままですよ」
「無理に訊き出すつもりはない」

京はその姿勢は崩さなかった。
何かに魘されるように顔を顰め寝言を言っているつばきの横で彼女の手を握った。
「…つばき、」
みこはまた様子を見に来ますと言って寝室を出る。寝台の上では「京様…」と時折京の名を呼ぶ。