甘く囁かれると更に体の感度が上がる。舌、指、吐息がほんの少しでも体に触れれば全身を貫くような快楽が襲う。
声を抑えるように手の甲を口に当てるがそれを京の手が取り払う。
「あ…っ…、はぁ、こ、えが…っ…」
「大丈夫、下には誰もいない」
本当だろうかと思っているうちに下腹部に圧迫感が広がり背中を反らせた。
幸せな瞬間だ。何よりも幸せな瞬間なのだ。
好きな人と一緒に過ごすこの時間が…―。

…―…


一人用の布団に二人体を合わせて眠っていたようだ。
既に朝になっていた。
微かに下から聞こえるのは女中たちの声だ。自分も仕事を、と思い京の腕から逃れようと体を捻る。

「おはよう、」
「おはようございます…。京様、狭くはありませんか」
「狭くなどない、この方が近くでお前の顔を見られていいな」

お互いにまだ裸だ。羞恥心を隠すため、つばきはそっと目を伏せた。
このままずっと彼と一緒の未来が存在するだろうか。
本当に自分は京の妻として傍にいられるのだろうか。
いや、別に妻としてではなくともいい。京がそう言ってくれてはいるが、どうか傍にいられたらそれでいいのだ。
どうした?と訊いた京に目を合わせた。