「京様、あの…」

京の手がつばきの頬に触れる。それはまるで合図のように全身を痺れさせる。粟立つ腕や背中に快感が走る。

「今夜は…仕事は、」
「もう“仕事”ではないだろ」

今日は普段ならば事前に伝えられる夜伽としての仕事はないと思っていた。
それに今はつばきの部屋にいる。
仕事ではないと言った京に確かに…と納得はするがどうも今日から急に理由もなく抱かれるというのは違和感があった。
京がゆっくりと顔を近づけてくる。

「京様、ここではなく…京様の寝室で、」
「ここでいい」
これ以上喋るな、とでもいうように唇を塞がれた。
「…ぁ、っ…ん、」

ねっとりと絡み合う舌の動き、そしてそれらの音が耳朶を打つとつばきは京の胸元にしがみつきながら足元をもじもじとさせる。
がくっと膝が震えると京がそっとつばきを布団の上に寝かせた。
つばきの膝を片方立て、足を広げさせる。
仕事ではない、これは…仕事ではないのだ。
焦点の合わない目をそっと閉じた。
京は覆いかぶさってくると無意識に体に力が入る。彼はよく“力を抜け”というがどうしても出来ない。
慣れてくれば…と思っていたがそう簡単には出来ないのだ。
首筋に這う舌が徐々に下がっていく。それと連動するようにつばきの呼吸も乱れていく。
「京、様っ…」
「ようやく俺のものになったんだ、俺以外を見るなよ」