「俺の両親は悪い人たちではないが俺とは考えが根本的に違う。それに人を目に見える価値だけで評価する。そういうところが好きじゃないんだ。だから若くから家とは距離を置いている。が、つばきとの結婚を認めてもらう条件として一条家を継ぐ」
「本当に私は幸せ者です。ですが、私は京様のご両親に認めてもらいたいと思っております。私のせいでご家族がバラバラになるのは嫌です」
「そういうと思ったんだ。だが、俺は何を失ってもお前だけは手放す気はない」
そう言い切った京の横顔は誰よりも輝いて見えた。
激しく高鳴る胸の鼓動に気が付かれないよう視線を正面に向ける。

と、奥の方で楽しそうに男性と会話をしている女性に目がいく。
誰よりも美しく見えた彼女は花梨だった。
胸元の開いたドレスはスタイルのいい彼女にはぴったりだ。煌びやかに光る宝石はまるで彼女のために作られたものだと錯覚するほどだ。
花梨は京とつばきに気がついたのか、こちらへ顔を向けた。

「あら、京様、お久しぶりですわ」

ゆったりとした口調の彼女はつばきを一瞥すると小さく微笑む。
「つばきさんも、お久しぶりです」