その様子を見てつばきははっとして頭を下げた。
「あ…申し訳ございません、あの…」
だが、間違ったことは言っていないと思っている。
「急に声を荒げてしまって申し訳ございません。しかし…母も父も決して不幸ではありません」
つばきはもう一度京の母親へ言った。

「両親の人生は悲劇でも不幸でもない。それは断言できます」
落ち着きを取り戻し、そう言ったつばきに誰も何も言うことはしなかった。

「つばきは現在、西園寺家とのかかわりはない。彼女のいとこにあたる清菜はつばきの面倒を見ていたわけじゃない。むしろ逆だ。まぁそんなことわかってもらおうなど思っていないが」
京はつばきの手を握った。
「じゃあ俺はこれで失礼するよ。今日はつばきを紹介したかっただけだ」

京の両親は何か言いたげな顔をしていたが、何も言わなかった。
つばきは軽く会釈をして向きを変え歩き出す。

言いたいことを言えたのは京が隣にいたからだ。隣でつばきを支えていたからだ。
（私は、京様と一緒なら…京様が隣にいるなら…頑張れる）