パーティー当日

思わず感嘆の声が漏れ出たのは鏡に映る自分の姿が本来の自分とはあまりに乖離していたからだ。もちろんいい意味で、だ。
みこは満足そうに珍しく微笑んでいる。

「ありがとうございます。こんなにも素敵に仕上げていただいて」
「元がいいからですよ。自信をもって」

みこと姿見越しに目が合った。彼女のお陰でメイクやら髪のセットやらを完成させられたのだ。京の指示のようだが、つばきの化粧をしている最中どこか楽しそうに見えた。

「京様の隣で堂々とご挨拶してくるのですよ」
「分かりました」

不思議だ。化粧をすることで自然と自信が持てる。
血色のいい顔色は化粧で作られたものだとは理解していたが、普段からいい食事をさせてもらっているから肌艶が良くなっている。
「さっそく京様に見てもらいましょう」
「分かりました」
この姿を一番に見せたかったのは京だった。つばきは速足で京の部屋に向かった。階段を駆け下りながら胸元に光るダイヤやアップにした髪型に意識を向ける。
(すべて高価なものだから気を付けなければ。髪型もみこさんが丁寧にセットしてくれたのだから)

一階の廊下を進むと、京がいた。視界に捉えるとつばきの足が自然に止まった。
「京様、」
つばき、と同じように名前を呼んでくれる京は目を大きく見開きもう一度自分の名前を呼ぶ。
テールコートに身を包む京がいつも以上に美しくつばきの瞳に映る。そのせいで言葉が出てこない。
これほどまでに美しい顔をした男性がいるのかと思ってしまう自分は相当に京に惚れてしまっているのだろう。

「準備が出来ました」

京は無言でつばきに近づくとそのままキスを落とした。
小さな声が漏れ出る。ここは廊下だ。また誰かに見られることだって十分に想定出来るのに。

「すまない、本当につばきは綺麗だな」
「…そ、そういっていただけて光栄です」

囁くようにそう言われると全身が鉛のように動かなくなる。指一本動かせなくなるのだ。

「お前を早く紹介したい」
「紹介…?」

意味深に笑う京につばきは小さく頷くしか出来なかった。
不安はもちろんある。だが、京が傍にいてくれたら不思議とそれが消えていく。