…―…


日が沈み、あっという間に暗闇に包まれる夜
今夜、“仕事”はない。
既に女中たちも離れに移動しているからか余計に廊下は静まり返っていた。
が、ちょうど京の寝室からみこの話声が聞こえた。
耳を立てる気はなかったが、“パーティー”という言葉が聞こえ自然に京の寝室前で足を止めた。本当はただ水を飲みに厨房へ行こうとしていただけなのだが。

「つばきさんのことはまだ伏せているのでしょうか」
「いや、親には既に話した。」
「そうですか、何と言っていたのでしょう」
「交換条件だ。家を継ぐ気はなかったが…―」

みこと京の声が聞こえにくい。
交換条件や家を継ぐ、などの会話は聞こえたがそれ以降はよく聞こえなかった。そっとその場を後にした。
おそらく京の両親の話をしていたのだろう。パーティーまでもう少しだ。京の両親に自分のことを何と紹介するのだろうと不安になった。本来は花梨がその役目を担うはずなのに。

つばきは足音を立てずに自室に戻った。