「だって…花梨さまは?」
「花梨?何故彼女が関係するんだ。彼女は彼女で出席するだろうが関係ない」
「関係…ない?」

婚約者として出席するのではなかったの?という疑問が残ったままだ。京はようやくつばきを離す。
そして上半身を起こすと
「ドレスを選びに百貨店に行こう」
と言った。

…―…


朝食を済ませ、自室で京からもらった簪で髪をまとめた。
何度も鏡で自分の姿を確認する。
今日は浅黄色の着物を選んだ。これはまだ一度も着ていない。
箪笥の中にある着物や洋服はどれも高級で手が伸びない。これに相応しい女性であるのかとどうしても思ってしまうのだ。
しかしせっかく京が用意してくれていたこともあり、京との外出時には着るようにしている。
今日は普段とは違い、少しだけ化粧をした。雪から化粧道具を借りたのだ。
ほんのり色づく唇や頬にまるで恋をしている少女のようだと思い、いや本当に恋をしてしまっているのだと自嘲気味に笑った。