仕事を紹介するといったこの男の言うことを信じているわけではない。しかし、所詮学もないつばきが職を見つけるとすれば“体”を売ることくらいしかないのだろう。
それはわかっていた。だからこそ、立ち去ることも逃げることもできずにいたのだ。

「その反応はいいってこと?良かった良かった。君みたいな可哀そうな子多いんだよね。俺はねそういう子たちに仕事を紹介しているんだよ」
そうして、つばきの手首を掴むとその男はずんずんと歩き出す。
「ちょっと待ってください。もう少し時間を、」
「だって泊まるところないんでしょう?こんな高級宿に泊まれないよ」

ぶるぶると体が震える。せっかく京に拾ってもらった命だ。

自ら命を絶つことはしない。だから、苦痛を伴う仕事だとしてもそれでも生き抜くしかない。
目を伏せ、抵抗をやめた。
男に掴まれている部分がやけに熱く感じた。自分の体温との差を間接的に伝えられる。
こんな時にも浮かぶのは京の顔だった。
「経験はあるの?」
焦点の合わない目を男へ向ける。が、突然「おい、」と声が響いた。
それはつばきの背後から聞こえる。