心細くなってくるのを誤魔化すように自分の腕を擦る。
少し前の自分ならばすぐに死を選んだだろう。でも今は死を選ぶつもりはなかった。
どうしてかわからない。でも、京に命を救ってもらった事実が、少しでもつばきを大切に扱ってくれた事実が命を絶つという選択を消した。
ひっそりと身を隠して生きて行こう。
「ここは、どこだろう」
周囲を見渡すも、土地勘がないつばきはつい足を止めてしまった。
と。
「あ、宿…?」
少し遠くに提灯が見えた。お宿のように見え、つばきはそれに向かって歩く。
今夜は野宿をしようと思っていたが、支払えない値段ではないのならば素泊まりで一泊したいと思った。
が、暖簾に書かれた宿の名前は見覚えがあった。
「…確か、ここは…」
高級宿として有名な宿だ。確かに周囲を見渡してもここの宿だけは異様な雰囲気があった。
どこか野宿できる場所を探すしかないと思い歩き出すが、背後から肩を掴まれた。瞬間的に振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。40代後半くらいだろうか、無精ひげの生えた男がつばきを見下ろしている。
「君、どうしたの。この辺であまり見ない顔だけど」
「すみません、宿を探していただけです」
「あぁ、泊まるところがないの?仕事は?」
言葉に詰まる。その様子を見て、男はにやりと不穏な笑みを浮かべた。
「じゃあ俺が紹介するよ、仕事。寝床付きだよ」
「…え?」
「君何歳?まだ若いよね」
少し前の自分ならばすぐに死を選んだだろう。でも今は死を選ぶつもりはなかった。
どうしてかわからない。でも、京に命を救ってもらった事実が、少しでもつばきを大切に扱ってくれた事実が命を絶つという選択を消した。
ひっそりと身を隠して生きて行こう。
「ここは、どこだろう」
周囲を見渡すも、土地勘がないつばきはつい足を止めてしまった。
と。
「あ、宿…?」
少し遠くに提灯が見えた。お宿のように見え、つばきはそれに向かって歩く。
今夜は野宿をしようと思っていたが、支払えない値段ではないのならば素泊まりで一泊したいと思った。
が、暖簾に書かれた宿の名前は見覚えがあった。
「…確か、ここは…」
高級宿として有名な宿だ。確かに周囲を見渡してもここの宿だけは異様な雰囲気があった。
どこか野宿できる場所を探すしかないと思い歩き出すが、背後から肩を掴まれた。瞬間的に振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。40代後半くらいだろうか、無精ひげの生えた男がつばきを見下ろしている。
「君、どうしたの。この辺であまり見ない顔だけど」
「すみません、宿を探していただけです」
「あぁ、泊まるところがないの?仕事は?」
言葉に詰まる。その様子を見て、男はにやりと不穏な笑みを浮かべた。
「じゃあ俺が紹介するよ、仕事。寝床付きだよ」
「…え?」
「君何歳?まだ若いよね」