…―…
…
「みこさん、私ちょっと買い物に出てもよろしいでしょうか」
「買い物?」
「はい、雪さんがお野菜を買いに行くと言っていたのでそれのお手伝いを…」
「あぁ、わかりました。気を付けて」
午後、京が昼食を食べ終えた後にみこにそう言って屋敷を出た。
今の話は嘘だ。雪が買い物に行くというのは本当だが、それの手伝いという口実で屋敷を出た。
最後に京に会いたくなったがぐっと堪えた。雪にもちゃんとした挨拶をしたかったが、仕方がない。自分一人がいなくなったとしても大した問題ではない。
それよりもつばきが屋敷にいる方が周囲に迷惑がかかる。
涙を堪えながら、早歩きで進む。
これからどこへ行こうか。行く当てもなく数十分が経過した。
まだ夜は肌寒い時期ではある。
どこかへ泊るといっても金銭はほぼ持っていない。ほぼというのはみこが何かあれば、と言って前に少しの金銭をくれたのだ。
京は給料という形で女中たちと同じタイミングでお金を支払うと言っていたが、ここまでしてくれてこれ以上何かを貰うなど出来ない。
辺りは少しずつ茜色に染まる。
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「みこさん、私ちょっと買い物に出てもよろしいでしょうか」
「買い物?」
「はい、雪さんがお野菜を買いに行くと言っていたのでそれのお手伝いを…」
「あぁ、わかりました。気を付けて」
午後、京が昼食を食べ終えた後にみこにそう言って屋敷を出た。
今の話は嘘だ。雪が買い物に行くというのは本当だが、それの手伝いという口実で屋敷を出た。
最後に京に会いたくなったがぐっと堪えた。雪にもちゃんとした挨拶をしたかったが、仕方がない。自分一人がいなくなったとしても大した問題ではない。
それよりもつばきが屋敷にいる方が周囲に迷惑がかかる。
涙を堪えながら、早歩きで進む。
これからどこへ行こうか。行く当てもなく数十分が経過した。
まだ夜は肌寒い時期ではある。
どこかへ泊るといっても金銭はほぼ持っていない。ほぼというのはみこが何かあれば、と言って前に少しの金銭をくれたのだ。
京は給料という形で女中たちと同じタイミングでお金を支払うと言っていたが、ここまでしてくれてこれ以上何かを貰うなど出来ない。
辺りは少しずつ茜色に染まる。