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翌朝

京の朝が早いことは知っていた。だが、今日は目が覚めると隣に京がいる。
しかも目を覚ました状態でつばきの顔を覗き込んでいた。
「わっ―…、お、おはようございます」
「おはよう。今日は休みだ」
「え…?そうなの、ですか」
「何だ。都合が悪いのか、俺が休みで屋敷にいることは」

まさか、と言ったがみこからある程度仕事へ出る時間帯を訊いていた。今日が休みだということは初耳だ。昨日急遽変更したのだろうか。

「朝食を食べよう」
「はい。今日はみこさんに言って掃除などお手伝いさせていただきたいのですが」
「構わない。好きにしていい」

ぶっきらぼうな言い方だが、所々優しさが出ているのだ。つばきの頭に手をやり撫でる。
子猫にでもなった気分になる。目を眇め、つい顔が綻ぶ。
幸せだと思った。短い期間でもこのような幸せな時間を過ごせたことに感謝している。

「京様、私を拾っていただき、ありがとうございます」
「どうした、急に」
「感謝は常に伝えておきたいのです」
「俺の方が感謝している。お前と出会えたことに」

つばきは小さな唇をきゅっと結ぶ。そうしなければ泣いてしまいそうだったからだ。
しかしここで泣くわけにはいかない。口元に弧を描き、そして私もですと答えた。