明日にもここを出ていく決意をしたというのに、まだ未練たらしく京を思ってしまう。
申し訳ございません、そう呟いて恐る恐る顔を上げる。
本来ならば拒否は絶対にしてはいけないことだ。

「これから仕事をしてもらう」
「え…―でも、今夜は、」

今日の仕事はなかったはずだ。京が急に予定を変更するとは思えない。
戸惑いを隠せないつばきだったが、京は低く抑えた声で制するように言った。

「お前は俺が買ったんだ」
「っ…―」
「何度も言うようにそれだけは忘れるな。お前は俺のものだ」

強く、そして何かを言いたげな瞳につばきはただ頷くしか出来なかった。
京に手首を強く掴まれる。有無を言わせぬ雰囲気のまま彼の寝室へ連れていかれる。静まり返る廊下に響くのは京とつばきの足音だけだった。