みこは深く深呼吸をした。

「…わかりました。一度だけですよ。同じようなことがあれば京様にすぐにお伝えします。そのつもりで。あなたにここを出ていかれると困りますので」
「ありがとうございます!あの…聞いてもいいでしょうか。みこさんは、あの紙に書かれてあったことは本当だと思っているのでしょうか」

みこは、はぁと息を吐いてつばきに向き直った。

「どっちだっていいことです。それが真実だとしてもそうじゃないとしても」
「っ…」
「何度も言った通りわたくしは京様のことを一番に考えて仕えているのです。あなたが呪われた目を持っていて京様を呪い殺そうというのであれば話は別ですが」
「みこさん自身が呪い殺されるとは思わないのですか」
「あぁ、そうですね。でも私は女中頭です。そのくらいのことで揺らぐほど弱くはございません。ただ、あなたが逃げようとしたり、傷つけられそうになれば…―京様が悲しみますので」

みこはお茶を客間のテーブルに置くとそのまま出ていってしまった。
呆然と立ち尽くすつばきは脳内で今の会話を再生する。みこは芯の通った強い女性だと再確認した。

「じゃあ、僕は京君にはとりあえず黙っておくよ。その方が都合がいいんだよね」
はい、と頷く。