顔を真っ赤にしながら否定するが、それは逆効果だった。
雪は目を細め、にんまりと口元に弧を描く。
つばきは一歩、後ずさり小さく首を横に振る。
「認めた方が楽になりますって。ね?」
「そ、そんな失礼な感情っ、持ってはいけない」
「失礼だなんて~素敵な感情だよ」
雪は続けた。まるで教師と教え子のように。
「いいですか?恋心っていうのは、どうしようもないものなんですよ。恋焦がれる気持ちはどうしようもないんです!それにあんなに素敵な人、好きにならない方が変ですって。次のお仕事はいつなの?頑張ってね!つばきちゃん!」
「……」
雪は忙しいようで他の女中に呼ばれ「はぁい」と大きな声で返事をすると奥へ消えていく。
つばき自身はまだ認めたくはなかった。だが、確かにこれが恋だとすれば…最近の複雑な胸中の説明がつく。
「どうしよう…」
誰もいない廊下でそう呟いた。
♢♢♢
翌日
昨夜は夜伽として京の寝室に呼ばれることはなかったため、自室の布団で眠りについた。せっかく一人で体を休めることが出来たのに“恋”の文字が脳内にこびりついて離れない。そのせいであまり眠れなかった。
(今夜は仕事があるのに…)
京は仕事が忙しいようで、早朝には家を出ているようだ。早めに帰宅してもまた仕事へ向かうこともある。
詳しくは知らないが貿易会社を営むということは相当忙しいようだ。
「おはよう」
「お、おはよう…ございます」
朝起きてすぐに顔を洗い身支度を軽く整えてから食堂に向かうと京がいた。
京は既に朝食を食べ終えているようだった。
着流し姿の京はやはり色気がある。無造作に一本に結んだ髪を触る。
(京さまがいるのならもう少し髪をちゃんと整えておけばよかった…)
「今日は休みをもらった」
「お休みを…?」
「そうだ。どうだ、良かったら出かけないか」
つばきは一気に顔色を明るくした。隠しきれない感情が表情や仕草に表れる。
そんなつばきを見て京はクスリと笑った。
「そんなに嬉しいのか」
「…はい。すみません、仕事もろくにしていないのに…」
「いいんだ。今夜ちょうど仕事があっただろう」
「…」
頬を赤らめながらはにかむ。
「支度が出来たら書斎にいるから呼んでくれ」
「分かりました」
朝食を急いで平らげ、薄紅色の着物を選びそれに着替えた。
雪は目を細め、にんまりと口元に弧を描く。
つばきは一歩、後ずさり小さく首を横に振る。
「認めた方が楽になりますって。ね?」
「そ、そんな失礼な感情っ、持ってはいけない」
「失礼だなんて~素敵な感情だよ」
雪は続けた。まるで教師と教え子のように。
「いいですか?恋心っていうのは、どうしようもないものなんですよ。恋焦がれる気持ちはどうしようもないんです!それにあんなに素敵な人、好きにならない方が変ですって。次のお仕事はいつなの?頑張ってね!つばきちゃん!」
「……」
雪は忙しいようで他の女中に呼ばれ「はぁい」と大きな声で返事をすると奥へ消えていく。
つばき自身はまだ認めたくはなかった。だが、確かにこれが恋だとすれば…最近の複雑な胸中の説明がつく。
「どうしよう…」
誰もいない廊下でそう呟いた。
♢♢♢
翌日
昨夜は夜伽として京の寝室に呼ばれることはなかったため、自室の布団で眠りについた。せっかく一人で体を休めることが出来たのに“恋”の文字が脳内にこびりついて離れない。そのせいであまり眠れなかった。
(今夜は仕事があるのに…)
京は仕事が忙しいようで、早朝には家を出ているようだ。早めに帰宅してもまた仕事へ向かうこともある。
詳しくは知らないが貿易会社を営むということは相当忙しいようだ。
「おはよう」
「お、おはよう…ございます」
朝起きてすぐに顔を洗い身支度を軽く整えてから食堂に向かうと京がいた。
京は既に朝食を食べ終えているようだった。
着流し姿の京はやはり色気がある。無造作に一本に結んだ髪を触る。
(京さまがいるのならもう少し髪をちゃんと整えておけばよかった…)
「今日は休みをもらった」
「お休みを…?」
「そうだ。どうだ、良かったら出かけないか」
つばきは一気に顔色を明るくした。隠しきれない感情が表情や仕草に表れる。
そんなつばきを見て京はクスリと笑った。
「そんなに嬉しいのか」
「…はい。すみません、仕事もろくにしていないのに…」
「いいんだ。今夜ちょうど仕事があっただろう」
「…」
頬を赤らめながらはにかむ。
「支度が出来たら書斎にいるから呼んでくれ」
「分かりました」
朝食を急いで平らげ、薄紅色の着物を選びそれに着替えた。