「ちょ…っ、あ…っと、お待ちください、」
「今日は俺も休みだ。朝早く支度する必要もない、別に何の問題もないだろう」
「あります。みのり様が起きてしまいます」
昨夜京が“考えがある”と言っていたが、その考えをつばきは共有をしていない。
それなのに京は考えを共有するどころかつばきの内ももに手をやる。そのたびにびくびくと身体を震わせる。
夜であればまだ分からなくはないが陽光がカーテンから差し込み、完全に朝だ。
戸惑うつばきに関係なく京はつばきの頬にキスをした。
「…っぁ、」
精一杯京の胸に手を置き、距離を取ろうとするがそもそも同じ布団の中で行われている状況だから意味がない。
徐々に声が漏れていくのがわかる。と、その時。
「京様…?あれ?どこ?」
みのりが起きたようだ。眼を擦りながら、上半身を起こして周囲を見渡す。
隣に京がいないことを知るとむっと頬を膨らませる。だがそれも少し離れたところにいる京とつばきを視界に捉えると一変する。
「きょ、京様ぁあ!」
「何だ、朝から」
「離れてください!私とは既に接吻までした仲ではございませんか」
「あれはお前が勝手にしたことだ。それにその後いった通り俺はもう少しでつばきと結婚する」
京も上半身を起こし、それに続くようにしてつばきも上半身を起こした。
涙目でかぶりを振るみのりは急いでベッドの縁に移動して今にもつばきたちに飛び掛かってきそうな雰囲気だ。
「だが、俺も悪かった。みのりの想いをちゃんと汲んでいなかった。だから…これからは何度でも言う。お前を女として見たことは一度もないし、俺はつばきを愛している」
「…酷い!だって私の方が!」
その時、京はつばきの腰に手を回した。強く引き寄せられると、京はつばきにキスをした。
みのりが見ている前で、堂々と…見せつけるように。
「…ん、…っ」
つばきは目を丸くして何が起こっているのか理解した時には既に京の舌がつばきの口内に侵入してきていた。
みのりはいつも通り泣き叫ぶのかと思いきや静かだった。京が顔を離すとつばきは顔を真っ赤にしてみのりを見る。みのりは呆然と京とつばきに目を向けながら今までとは違う反応をする。前回、みのりにキスをしているところを彼女に見られたがその際は直ぐにそれを中断したが今日は違う。見せつけるように深いキスをした。それがダメージだったのか、目に涙を浮かべたまま首を振る。
「私は…!まだ子供です!それなのにキスを見せつけるなんて…」
「子供?普段は子供扱いしないでと言っていたが」
「…それは、」
「いいか、俺はこの通りつばきを愛している。みのりのことはそういう目で見たことは一度もないし、これからもない」
みのりは静かに泣いていた。いつもとは違う彼女につばきは複雑な心境だった。
「俺はつばきがこの世で一番大切だ。つばきを傷つけるような言動は許さない。今後慎むように」
京はこの日、初めてみのりと正面から対等に話しているのだと思った。
いつもは妹のように接していた。でも今日は違う、一人の女性として会話をしている。



