つばきは何度も息を吐いて大股で客室まで向かう。
きっと宗一郎も疲れて寝てしまったのだろう。一日中みのりを見張っていれば疲れるだろう。客室の襖の前で声を掛けた。就寝中であればとりあえず今日もみのりを京の寝室で寝かせるしかない。

「宗一郎様、」
薄っすらと灯りの灯っているのがわかる。失礼します、と言ってそっと襖を開け覗くと宗一郎が上半身を起こしてちょうど目を覚ましたようだった。
睡眠時間を奪ってしまっているという罪悪感ももちろんあるが、今はそれどころではない。

「どうしました、つばきさん」
「就寝中に申し訳ございません。みのり様が…」
「みのりが?」

周囲を確認するとみのりがいないことに気づき、額に手をやりやれやれと
首を横に振る。

「京さんのところに?」
「ええ、そうです。申し訳ないですが…」
「何も謝ることはありませんよ。悪いのは全部あの子なのですから。それにしても…しつこいですねぇ」
一緒に客室を出て、京の寝室へ向かった。

「みのりより先に寝るものか、と思っていたら…疲れてしまって寝てしまいました。あの子もそういうところがずる賢いから」
「みのり様…本当に京様のことが好きなのですね」

視線を床に移したまま、そういう。
宗一郎は、そうですねと言った後に一度足を止めた。


「宗一郎様?」
「浴衣が開けているようですよ」
「あ、…すみません、」

恥ずかしくて宗一郎から目を逸らして浴衣を整える。寝室を出てくる際に直したはずだったのだが、よく考えるとちゃんと確認していなかった。

「恋は盲目とはよくいったものですね。でも、みのりはいい加減卒業しなければいけないのです。いつまでも京さんを追いかけてはいけない。それと…京さんもちょっと鈍いところがありますね。いい加減気が付かないと僕もつばきさんの“兄”を卒業できません」

脳内に疑問符が浮かんだまま京の寝室に到着した。
宗一郎がドアを開ける。
すると、そこには泣きじゃくるみのりが京を押し倒しているのがすぐに目に入る。

「み、みのり!」

流石の宗一郎も驚きすぐにみのりの元へ向かう。みのりが宗一郎とつばきを視界に捉えた途端、彼女は誰もが驚く行為をした。
みのりはこの中で誰よりも驚いている京に向かって顔を近づけ、キスをした。
「…っ…、」