「みのりっ…」
「絶対一緒に寝る!」

勢いが良すぎたのだろう、抱き着いたままのみのりを抱えるようにしてその場に座り込む京。“幽霊”ではなかったのだが、この状況に安堵できるわけもなく。

「…何故ここにいる。客室に戻れ」
「嫌です!絶対に!」
「…いい加減にしろ。俺はいつまでもお前の兄ではない、親でもないんだ。何度言ったらわかるんだ」
「そんなことはわかっております!!それに私もいつまでも子供ではないのです」

みのりはそのまま京にしがみつき離れようとはしない。
女、子供に対して力づくに離すことも出来ず京が深い溜息を溢す。

「宗一郎さんはどうした」
「お兄さまは寝ております。寝た隙に来ました!無駄ですよ、絶対に今日こそは京様と一緒に寝るの!」
「…つばき、すまないが…宗一郎さんを呼んできてくれ」
「わかり、ました…」

乱れた浴衣を整え、いつまでも離れることはしないみのりに内心溜息を溢して客室へ向かった。
(京様も京様だわ、いい加減…みのり様が京様を兄のように…ではなく男として見ていることを理解するべきなのに…)
モヤモヤとした感情を京へぶつけたかったが、それは自分がどんなに小さい人間なのかを相手に伝えることと同じだ。