「皿洗いなら俺がやる」
「えっと…？」
「ははは、京さん大丈夫ですよ。ここは僕がお手伝いしますから。今日泊まることになったので何か手伝いたいのですよ。みのりにもさせますから」
「ダメですって、宗一郎さま！私の仕事ですから」
「いいんですよ、それによく言うでしょう。働かざる者食うべからずって」

　いい意味で華族らしくない発言につばきはふっと噴き出して笑ってしまった。和やかな雰囲気に包まれている中、隣にいる京だけが正反対の空気を作る。
流石につばきもそれを感じとり何とか宗一郎を説得してこの場から離れさせることに成功した。ただ、京は宗一郎が厨房を出るまではそこを動くことはしなかった。
宗一郎がいなくなると京はつばきの右手首を掴む。驚く間もなくそのまま抱きしめられていた。

「京様、ちょっと、あの…まだ仕事が、」
「そんなことはどうだっていい。俺がやる」
「何をおっしゃっているのですか、京様のお仕事ではございません」

宗一郎といい京といい変な発言をするものだと思った。

「お前は兄が欲しかったのか」
「…え？…いえ、別にそのようなことを思ったことは…」
つばきの背中に回る腕の力が強くなるのを感じながら耳元で低く艶やかな声が聞こえると全身が熱を持つ。仕事中だというのに。