「みのり、つばきさんに失礼だろう。謝りなさい。それに、みのりよりも何十倍もつばきさんの方が“素敵”な女性だよ」
「なっ…なにを…おっしゃるの?!お兄さままで!」
下瞼で涙を必死に抑え、顔を赤くする。

「みのりがその態度ならば仕方がない。みこさん、客室は空室でしょうか?」
「ええ、そうですが」
「では僕も泊まらせてくれませんか?家には伝えてあります。みのりならば絶対に帰らないと言ってきかないと思いましたので、僕が見張っておきます」
「そうですか。その方が助かりますね」

みこは簡単に了承してしまった。
来客は多いが、こうも立て続けとなると珍しいだろうし相手は伯爵家だ。
そう簡単に決めていいものなのかと思ったが、そもそも京も華族であり彼らとは昔からの付き合いと聞いているからこういう事も日常茶飯事なのかもしれない。

「京様は日中少し家を空けておりますが、すぐに戻られますのでどうぞ、こちらに」
「お兄さまも泊まるの?!聞いてない」
「そんなこと当たり前じゃないか、何故みのりに許可を取らねばならないんだ?」
「……っ!」

憤慨しているみのりの顔を覗き込み満足そうに頷く宗一郎。
みのりとは性格含め、正反対だと思った。