「お兄さま…?」
状況の分からないつばきは京とみのりを交互に見る。嘆息を漏らしたみこは呆れた目をみのりへ向けた。
「みのり様、藤野伯爵のお嬢様なのですからもう少し品のある行動をしたらどうでしょう」
「もう!みこさん…少し大目に見てくださってもいいのではありませんか!」

そう言いながらもみこの言うことを聞き入れ、京から離れたみのりは今度は「京様のお部屋に行きましょう!今日はここに泊まることにしているの!」と言って京の手を取りみことつばきの脇を通り過ぎる。

「…えっと、」
「あの子は小さな頃から京様のことを兄のように…いえ、それ以上の感情を持っているようです。一条家とはそれなりに付き合いのあるご家庭ですので、京様もあまり無下に出来ないのですよ」
「藤野伯爵?のお嬢様なのですか」
「ええ、そうです。みのり様にはお兄さまもいらっしゃるのですが…昔から京様にべったりで。それこそずっと花梨様を敵視しておりました。まぁ、まだ15歳ですので京様にも子供扱いしかされていないのですが」
「なるほど…今日は京様に会いに来たということですね」
「ええ、そうだと思いますよ。泊まると言っているので、もうそのつもりなんでしょう。以前来た時も大変だったんですよ」
「…そうですか」
大きく息を吐き、過去を思い出しているのか…みこは嫌そうに顔を歪める。