「安心しました」
ほっとするつばきに京は子供を見守るような温かいまなざしを向ける。
「嫉妬でもしたのか」
「そ、そんなことは…ある、かもしれません」
顔を真っ赤にしたつばきは目を伏せた。
(だって、京様は誰よりも素敵な男性なのだから…私でなくともたくさん“候補”がいるはずなのに)
夜伽として買われたのにも関らずこうやって愛を一心に受けることが出来るのだ。幸せ過ぎて夢でも見ているようだ。
「可愛いな」
「…えっ…」
「つばきも嫉妬するのか。お前に心配を掛けたくないという思いが一番だがそういう顔を見るのもたまにはいいかもしれない」
そう言うと京は体勢を変える。一気に組み敷かれ、京が男であると実感する。
掴まれた手首はびくりともしない。
「心配しなくても俺はお前に夢中だ」
「私は…別に心配はして…」
「そうか?顔に出ていたが」
反論できずつばきは瞼を閉じる。同時に京の唇がつばきのそれに触れる。
触れたと思いきや、すぐにそれは唇を割って荒々しく口内を犯す。
一度スイッチが入ると止めてはくれない。むしろ加速する。
ずっと一緒にいればそのくらいのことはわかる。
諦めたように京の愛撫を受け入れる。
お互いの唾液が絡み、全身が痺れるような甘美な刺激に声が漏れる。
「京様っ…、」
京は何も言わず既に開けていた浴衣の帯を取り払い、全身が空気に触れる。
羞恥で全身が赤みを帯びる。それはつばき自身が自覚していた。
京はつばきの腹部の傷に指を這わせる。
「…別に誰に…見せるわけではありませんので…気にしてはおりません」
そこに這う指が傷跡を何周かするとつばきの顔に目をやる。
この傷はむしろ京を守ることが出来たという証でもある。つばきにとってそれは誇れるものでもある。
「大切な女性に傷跡を残すなど…男として失格だな。だが、俺は二度とつばきを危険な目には合わせない。絶対に守る」
「…はい、私もそれを望んでおります」
京はつばきに覆いかぶさるとつばきの耳たぶを甘噛みした。
つばきはしがみつくように京の背中に手を回し、熱い吐息を漏らす。
その夜もとても長い時間そうしていた。