「とにかく何か口にした方がいいですね。今、作ってきます」
みこはそう言うとそそくさと部屋を出ていく。
「京様…」
上半身を起こそうにも、腹部の痛みで顔を歪める。すぐにそれを京が制止する。
「しばらくは安静にするんだ。傷口はそこまで深くなかった。だから助かったんだと思う。だが、出血が多く本当に危なかった」
「…そうでしたか。ご心配おかけしてすみません。でも…」
つばきは京を見据えた。
「良かった。未来が変わったのですから」
翔は何のことを話しているのか分からないようで首を傾げる。

「良くはない。つばきを守ることが出来なかったのだから」

京は心底後悔しているようだった。でもつばきは首を横に振る。

「私の目は…このために存在したのだとはっきり分かりましたから。未来が変わってよかったと本当に思っております。私は京様のために存在したのだと確信しております」
「そうか。だが、俺はつばきを危険な目に合わせてしまって申し訳ないと思っている。もしもつばきがこの世からいなくなったら…そう考えるだけでどうかなりそうだ」

翔がいるというのに構わずつばきの頬に手を当てる。

「でも奇跡的に生きております。これからも一緒ですね」
「そうだな。人生を終えるその時まで、俺の傍にいてほしい」
「もちろんでございます」

雪はつばきを刺した後、すぐに警察に連行されたそうだ。
つばきの傷が深いものではなかったのは、躊躇いがあったからだと確信している。

京がつばきに顔を近づける。

すっと目を閉じると、唇に温かい感覚が広がる。
そして、京は言った。

「愛している」と。

もちろん私も愛しておりますと返すと京は優しく微笑んだ。




華に浪漫完結