「本当に呪い殺す力があるのであればもう俺は死んでいたっていいはずだ。他にもお前を監禁していた奴らだってそうだ。わざわざ逃げなくとも、全員をその目で呪い殺せばいいだけだ。そもそも今までその隙が全くなかったことも不思議だ。その目が人を呪い殺す力はないと俺は思っている」
つばきは何と言って説明したらよいか考えた。
確かにそのような力はない。京の言う通りだ。
(私には呪い殺す力はない。でも…未来を見る力はある)
本当のことを彼に言うという選択はなかった。
無言のつばきの態度は京の発言を“肯定”する。
「今は言わなくていい。ただ俺はそう思っているということをお前に伝えておく」
分かりました、と返す。
無理に聞き出そうとせずつばきに任せる姿勢に益々京の考えがわからないでいた。
まるで、大切にされているようだと思った。そんなはずはないのに。
「何か聞きたいことはないか」
「聞きたいこと?」
「今日はつばきのことを知ろうとここへ呼んだのだが…無理に訊かれるのも嫌だろう」
「そんなことは…ありませんが、」
ただ、と言って眉を顰めた。
「私は今まで西園寺家でお世話になっていました。その後、この目のこともあり追い出されました。母は体が弱く…私を養うために無理をさせてしまっていました。思い返せば、ずっと生きていることに後ろめたさがありました。母に無理をさせてきたのも事実ですから。だから正直に言いますと、あの日…私が橋から飛び降りようとしたとき、京様が引き留めてくださいましたが…―今も生きていていいのかわからないでおります」
「それは絶対に許さない」
「っ…」
突然、抑えた声と同時につばきの肩を掴む京にビクッと肩を揺らした。
「死ぬことは俺が許さない。分かったか、それだけはダメだ」
「…で、でもっ…私は…」
「前にも話した通り、お前の命は俺が買った。つばき一人の命ではない」
真っ直ぐな瞳の中にはしっかりとつばきが映っていた。
(あぁ、どうしてこの人はここまで真っ直ぐに私を見るのだろうか)
胸の奥がヒリヒリと熱く焦がれていく。
「安心しろ、俺はお前を手放したりはしない」
「……」
そっと肩に置かれた手がつばきの頬へ移る。ぞわぞわと鳥肌が立つような感覚があるのにそれが嫌ではない。むしろもっと、そう求めてしまいそうになる。
(私は…どうかしてしまったの?)
自身の感情に振り回されながら、無意識に枕の端を握っていた。
「何もしないといったが、キスくらいはいいか?」
頬を撫でていた指がつばきの唇に触れた。
「もちろんです。私は…夜伽としてここにおります」
そう言うと、京はつばきに顔を近づけた。
目を閉じると同時に唇が触れる。今日二度目のキスに全身を強張らせた。
嫌ではない、違う、むしろ逆だが慣れない行為はそうさせるのだ。
触れるだけのキスだと思った。しかし、それはいつまでも止まらない。
「…ぅ、んっ…」
いつの間にか後頭部に移動した手のせいで、顔を離すことが出来ない。
(私は買われた身なのだから…キスを拒むような素振りは見せてはダメ。でも…これ以上は…)
京が体勢を変えた。つばきに覆いかぶさると彼の舌が口内を犯していく。
つばきは何と言って説明したらよいか考えた。
確かにそのような力はない。京の言う通りだ。
(私には呪い殺す力はない。でも…未来を見る力はある)
本当のことを彼に言うという選択はなかった。
無言のつばきの態度は京の発言を“肯定”する。
「今は言わなくていい。ただ俺はそう思っているということをお前に伝えておく」
分かりました、と返す。
無理に聞き出そうとせずつばきに任せる姿勢に益々京の考えがわからないでいた。
まるで、大切にされているようだと思った。そんなはずはないのに。
「何か聞きたいことはないか」
「聞きたいこと?」
「今日はつばきのことを知ろうとここへ呼んだのだが…無理に訊かれるのも嫌だろう」
「そんなことは…ありませんが、」
ただ、と言って眉を顰めた。
「私は今まで西園寺家でお世話になっていました。その後、この目のこともあり追い出されました。母は体が弱く…私を養うために無理をさせてしまっていました。思い返せば、ずっと生きていることに後ろめたさがありました。母に無理をさせてきたのも事実ですから。だから正直に言いますと、あの日…私が橋から飛び降りようとしたとき、京様が引き留めてくださいましたが…―今も生きていていいのかわからないでおります」
「それは絶対に許さない」
「っ…」
突然、抑えた声と同時につばきの肩を掴む京にビクッと肩を揺らした。
「死ぬことは俺が許さない。分かったか、それだけはダメだ」
「…で、でもっ…私は…」
「前にも話した通り、お前の命は俺が買った。つばき一人の命ではない」
真っ直ぐな瞳の中にはしっかりとつばきが映っていた。
(あぁ、どうしてこの人はここまで真っ直ぐに私を見るのだろうか)
胸の奥がヒリヒリと熱く焦がれていく。
「安心しろ、俺はお前を手放したりはしない」
「……」
そっと肩に置かれた手がつばきの頬へ移る。ぞわぞわと鳥肌が立つような感覚があるのにそれが嫌ではない。むしろもっと、そう求めてしまいそうになる。
(私は…どうかしてしまったの?)
自身の感情に振り回されながら、無意識に枕の端を握っていた。
「何もしないといったが、キスくらいはいいか?」
頬を撫でていた指がつばきの唇に触れた。
「もちろんです。私は…夜伽としてここにおります」
そう言うと、京はつばきに顔を近づけた。
目を閉じると同時に唇が触れる。今日二度目のキスに全身を強張らせた。
嫌ではない、違う、むしろ逆だが慣れない行為はそうさせるのだ。
触れるだけのキスだと思った。しかし、それはいつまでも止まらない。
「…ぅ、んっ…」
いつの間にか後頭部に移動した手のせいで、顔を離すことが出来ない。
(私は買われた身なのだから…キスを拒むような素振りは見せてはダメ。でも…これ以上は…)
京が体勢を変えた。つばきに覆いかぶさると彼の舌が口内を犯していく。