「何で笑ってるの?」
「ごめんね。良かったと思って」
「良かった?」
「うん、短い時間ではあったけどここでの生活は楽しかった。出来れば京様のもとで一生を過ごしたかったけれど…でも、」
(京様が無事ならば…本当に良かった)

「意味がわからないわ。私に殺されることがわかってたみたいな反応しないで」
「分かってなんかないよ。でも最後に聞かせて。どうして私を殺したいの?」
「…私にはお姉ちゃんがいた。逆に言えば私にはお姉ちゃんしかいなかった。とても綺麗で気立てのいい自慢の姉だった。お姉ちゃんは、事故で死んだんじゃない」

雪に出会った時、姉がいたと言っていた。その際、事故で死んだと聞いていた。
目を見開き、どういうこと?と訊く。雪は全てがどうでもよくなったように天井を向いて「ははっ…」と乾いた笑いをした。

「お姉ちゃんは自殺したの。一条家で」
「…どういう、こと、」
「お姉ちゃんは私を養うために使用人として一条家で働いていた。私は親戚の家でお姉ちゃんから送られてくるお金で生活をしていた。幼いころに両親が亡くなってからずっと親のように私を育ててくれた大切な家族だったのに」