この日はなかなか眠りにつけなかった。ちょうど外は雨が降っているようで、屋根を叩きつける大きな雨音がいつもならば睡眠導入剤となるというのに…―。
翔が言っていたことを思い出していた。
『京君は女性関係ちゃんと清算してるの?』
京の過去は知らない。今、京が自分を愛してくれているのであればどうだっていいのだ。
でも、と思った。
もしかするとつばきへの恨みはつばき自身に直接的な恨みを持った人間とも限らない。
例えば、京に好意がある人物がつばきに敵意を向ける可能性はある。
薄暗い部屋の中で天井を視界に入れながらエンドレスにそのことを考えていると、寝返りを打った京がつばきの方へ体を向けた。
「眠れないのか」
「京様、起こしてしまいましたか」
「いや、大丈夫だ。考え事…だろうな」
「すみません。色々と考えていたら眠れなくなってしまって。みこさんもまだ本調子ではないようですが…ようやく起き上がれるほどには回復して良かったです」
「…そうだな」
今度はみこの話題で京の顔色が曇る。
(そういえばどうしてみこさんは…私に食事係を頼んだのかしら…)
京の腕が伸びてきたと同時に“考え事”が一瞬で吹き飛ぶ。
「何か些細なことでも教えてくれ。大丈夫だ、屋敷内の警護は十分だし、つばきのことは俺が絶対に守る」
「…ありがとうございます。でも、京様が…」
「それも大丈夫だ」
背後から強く抱きしめられる。気を抜くと目頭が熱くなり涙が零れてしまいそうだ。
大丈夫だというがそれはつばきの命であって、京の命は違う。つばきの見た“未来”は京が誰かに刺されるという未来だ。
そしてそれはつばきを庇ってのことだった。どうしたら京を助けることが出来るのかと考えるが一番はやはり自分が京の前から去ることなのだ。そうすれば京は助かるのだから。
しかし、それは絶対にさせてはくれないことをつばきが一番わかっていた。
「京様がいると温かいです」
「そうか、俺もだ」
京がつばきを抱きしめる腕の力はつばきを離さないという強い意志を感じた。絶対に離してくれないだろう、いつの時もそうだった。
いつの間にか瞼が重くなっていく。
京の愛しているという声が聞こえる。安心して眠ることの出来る安眠剤なのかもしれない。
翔が言っていたことを思い出していた。
『京君は女性関係ちゃんと清算してるの?』
京の過去は知らない。今、京が自分を愛してくれているのであればどうだっていいのだ。
でも、と思った。
もしかするとつばきへの恨みはつばき自身に直接的な恨みを持った人間とも限らない。
例えば、京に好意がある人物がつばきに敵意を向ける可能性はある。
薄暗い部屋の中で天井を視界に入れながらエンドレスにそのことを考えていると、寝返りを打った京がつばきの方へ体を向けた。
「眠れないのか」
「京様、起こしてしまいましたか」
「いや、大丈夫だ。考え事…だろうな」
「すみません。色々と考えていたら眠れなくなってしまって。みこさんもまだ本調子ではないようですが…ようやく起き上がれるほどには回復して良かったです」
「…そうだな」
今度はみこの話題で京の顔色が曇る。
(そういえばどうしてみこさんは…私に食事係を頼んだのかしら…)
京の腕が伸びてきたと同時に“考え事”が一瞬で吹き飛ぶ。
「何か些細なことでも教えてくれ。大丈夫だ、屋敷内の警護は十分だし、つばきのことは俺が絶対に守る」
「…ありがとうございます。でも、京様が…」
「それも大丈夫だ」
背後から強く抱きしめられる。気を抜くと目頭が熱くなり涙が零れてしまいそうだ。
大丈夫だというがそれはつばきの命であって、京の命は違う。つばきの見た“未来”は京が誰かに刺されるという未来だ。
そしてそれはつばきを庇ってのことだった。どうしたら京を助けることが出来るのかと考えるが一番はやはり自分が京の前から去ることなのだ。そうすれば京は助かるのだから。
しかし、それは絶対にさせてはくれないことをつばきが一番わかっていた。
「京様がいると温かいです」
「そうか、俺もだ」
京がつばきを抱きしめる腕の力はつばきを離さないという強い意志を感じた。絶対に離してくれないだろう、いつの時もそうだった。
いつの間にか瞼が重くなっていく。
京の愛しているという声が聞こえる。安心して眠ることの出来る安眠剤なのかもしれない。