どうしてつばきを指定したのかわからない。
別に誰が作っても同じだろうし、今まではつばき以外が作っていたのだ。
もしも味が合わないという理由だとしても、つばきの作ったお粥を食べてからそれを言うのであればわかるがまだ口をつけていない。

「私が作ることはもちろん何の問題もありませんが、他の人ではダメなのですか」
「…ええ、ごめんなさいね」

ゴホンと何度も咳き込むみこを見ていると本当に辛そうでどうにかして早く体調を良くしてあげたいと思った。

「消化の良いものをみこさんの体調が治るまで作りますね」
「ありがとう。それから、調理中からここに運んでくるまでに食事から目を離さないで頂戴。出来れば誰にも触れてほしくないの」
「…あ、はい。分かりました」
益々意味の分からない注文をするみこにつばきは戸惑っていた。
「食事の用意ありがとう」
「いえ、何かあれば言ってください。みこさんのお部屋に入ることなんて滅多になくて…ちょっと緊張しておりました」
「別に緊張する必要なんてないわ。いつでもいらっしゃい」
「はい。では、私はこれで」

つばきは食べる邪魔にならないようにみこの部屋を出る。
もうじき緋色の目で見た未来が来るかもしれない、のだ。
それなのに何一つ手がかりを掴めていないことに焦燥感が募っていく。