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京が髪を切ってきたのを見てつばきは両手を合わせ駆け寄った。

「京様、お似合いです」
「そうか、ありがとう。つばきも最近随分綺麗になった」
「そうでしょうか…、あ、みこさんに化粧道具を貰ったり教えてもらったりしているので」
「それはよかった。何か欲しいものがあればすぐに言ってくれ」
「いえ!特にありません!それよりもみこさんが…」
「あぁ、数日は休ませる予定だ」

それを聞いてつばきも深く頷く。
実は数日前からみこが体調を崩しているというのだ。
医者によると風邪のような症状だから数日休めば問題ないとのことだが、責任感の強いみこは直ぐに仕事に戻ろうとする。

「私がみこさんの代わりに仕事頑張ります」
「いや、無理しなくていい。別に屋敷内の仕事が滞っても問題はない。皆にもそう言ってある」
「はい」

女中頭が不在というのはやはり他の女中も不安があるようで屋敷内はいつもの雰囲気ではない。


つばきは離れに向かって歩き出した。みこの分まで仕事をする必要はないといわれてはいるが、みこはこれまでもつばきが体調を崩すと看病してくれるし、さりげなく仕事も教えてくれるし助言もくれる。
してもらったことを返したいと思うのは当然だ。

「よし、とりあえずお粥…を、」

離れの厨房に到着してすぐにお粥を作りだす。
バタバタと忙しそうに廊下を歩く女中たちの足音を背後に聞きながら手早く準備する。
すると、

「つーばきちゃん」
「わ、」
「へへ、珍しいね?離れに来るなんて」
「びっくりした。うん、みこさんに昼食を…」
「それは助かる。今ちょうど他の人たちと昼食作ろうって言ってたところだったんだよ」
「そうなんだ。でも大丈夫よ、私がやるから」
雪が無邪気に「さっき食べたばっかりなのにお腹空いてきた」とお腹減っているアピールをするものだから可愛くてつい笑ってしまう。
和やかな雰囲気の中、お粥を作りそれをみこの部屋に運ぶ。