どうしてこの人はこんなにも温かい眼を自分に向けるのだろうと思った。
京は泣きじゃくるつばきを落ち着かせるようにずっと抱きしめてくれた。
そのたびに彼を失いたくはないと強く思った。

「京様っ…―私は未来を変えたいのです、あなたのいない未来など想像すらしたくない」
「分かっている。俺だってできれば避けたいし、お前の話だとつばきが刺されそうになったのを俺が庇ったということだな。つまりお前が狙われているということだ、それは絶対に避けたい」
「それも確証はないのですが…血にまみれた京様が苦しそうにしながらも私を抱きしめておりました。私は『どうして庇ったのですか』と言っていたので…だから京様ではなく、私が刺されそうになったところを京様が庇ったのだと思うのです。私の目で京様が刺される瞬間は見ることは出来ませんでした。逃げた、とか医者とか…そう言った言葉も飛び交っていて…騒然としていました」
「そうか。分かった。時期も不明なのか」
「はい、時期がわからないのです。だから…その時がいつ来るのかっ…」
「大丈夫だ。とにかくつばきを刺そうとするほどに恨みを持つ人物を探して接触してくるのを防げばいい。そもそもつばきと関わりのある人物は限られる。護衛も多くしよう。屋敷に出入りできるのは限られた人だけにする。屋敷内で起こることならば対策は出来る」


まだ泣き続けるつばきにいった。

「だが、つばきが俺の前から離れることは許さない」
「…っ」

以前にも言われたその言葉につばきは無言で京を見つめた。

「もしもお前が俺のせいで危険に晒されるというのならば話は別だが、そうではないのならばそばにいてほしい。俺の方が今じゃお前なしでは生きていけないようだ」

そう言ってつばきの頬を撫でた。
それを聞いてまた、涙を零した。絶対にこの人を失いたくはない、何度もそう思った。そして同時に改めて自身が存在した理由を確信した。

―京様のために、私は存在した

自分がどうすべきか京の腕の中で考えた。絶対に未来を変えたい。変えねばならないのだ。