つばきはかぶりを振り、そんなことはありませんと言った。
「いつも気を遣って色々と連れて行ってくれるではありませんか。十分です。今日は少し散歩をしておりました。素敵なお店があれば入ってみようと思っていたのですが、一人で入る勇気はないので」
これは本当のことだった。翔と会った帰りに素敵な店を発見したのだが寄らずに来た。
敷居が高いように思えてしまうのだ。次に来るときは京と一緒に、そう思っていたのだ。
そうか、と頬を緩める京はつばきを寝台に来るように促す。こくり頷き、いつまで経っても慣れない胸の鼓動を感じながらベッドの前に立つ。既に座っている京に手をさし出され、それを取る。すっと引き寄せられた。
「京様、」
「どうした」
「いえ、いつもドキドキしてしまって…どうしたら慣れてくれるのかなと思いまして」
体勢を崩しながらもすっぽりと京の腕の中にいた。男らしい無骨な手がつばきの後頭部を撫でる。
「慣れなくてもいい。そういうお前が可愛くて仕方がない」
「か、可愛い…」
京は見た目や雰囲気からは想像もつかないような甘い言葉をつばきにくれる。
その度に心拍数が上昇して上手く言葉を紡げないほどにドキドキするのだ。きっと、この胸の高鳴りは京に伝わっているだろう。
京はドキドキしないのだろうか、この胸の高鳴りが伝染してしまえばいいのにと思う。京があまりにも常に冷静で表情を変えないからそう思う。
京が自然な流れでつばきをベッドへ寝かせる。つばきの視界には広い天井と京が映る。シーツの上に広がる髪を愛おしそうに撫でる。
「あ、…っ、」
京の手が太ももを撫でたとき、その手が流れるように膝に触れる。
そこは今日、怪我をした箇所だった。
つばきの様子がいつもと違うことに気が付いたのか京が手を止め、目線をそこへ向けた。
「どうした、この傷は」
「それは今日転んでしまって。でも全然痛くはありません」
「今、一瞬顔を歪めただろう。すまない、気が付かなかった。見せてみろ、手当はしてないようだが」
京は直ぐにつばきの膝を立てる。
「いつも気を遣って色々と連れて行ってくれるではありませんか。十分です。今日は少し散歩をしておりました。素敵なお店があれば入ってみようと思っていたのですが、一人で入る勇気はないので」
これは本当のことだった。翔と会った帰りに素敵な店を発見したのだが寄らずに来た。
敷居が高いように思えてしまうのだ。次に来るときは京と一緒に、そう思っていたのだ。
そうか、と頬を緩める京はつばきを寝台に来るように促す。こくり頷き、いつまで経っても慣れない胸の鼓動を感じながらベッドの前に立つ。既に座っている京に手をさし出され、それを取る。すっと引き寄せられた。
「京様、」
「どうした」
「いえ、いつもドキドキしてしまって…どうしたら慣れてくれるのかなと思いまして」
体勢を崩しながらもすっぽりと京の腕の中にいた。男らしい無骨な手がつばきの後頭部を撫でる。
「慣れなくてもいい。そういうお前が可愛くて仕方がない」
「か、可愛い…」
京は見た目や雰囲気からは想像もつかないような甘い言葉をつばきにくれる。
その度に心拍数が上昇して上手く言葉を紡げないほどにドキドキするのだ。きっと、この胸の高鳴りは京に伝わっているだろう。
京はドキドキしないのだろうか、この胸の高鳴りが伝染してしまえばいいのにと思う。京があまりにも常に冷静で表情を変えないからそう思う。
京が自然な流れでつばきをベッドへ寝かせる。つばきの視界には広い天井と京が映る。シーツの上に広がる髪を愛おしそうに撫でる。
「あ、…っ、」
京の手が太ももを撫でたとき、その手が流れるように膝に触れる。
そこは今日、怪我をした箇所だった。
つばきの様子がいつもと違うことに気が付いたのか京が手を止め、目線をそこへ向けた。
「どうした、この傷は」
「それは今日転んでしまって。でも全然痛くはありません」
「今、一瞬顔を歪めただろう。すまない、気が付かなかった。見せてみろ、手当はしてないようだが」
京は直ぐにつばきの膝を立てる。