「それで、迷宮攻略を手伝うっていうけれど、僕は何を手伝えばいいの?」

迷宮攻略を請け負うことは了承したが、迷宮の構造が頭に入っているからといって、実際に迷宮でのサポートはほとんどできないに等しい。

荷物持ちとして迷宮に一緒に潜って道案内をする……というのはできるかもしれないが。
迷宮攻略のギミックだったり仕掛けだったりは僕はほとんど知らない。

「そうだな……階段の場所を教えて欲しいってのがあるがそれは今のところ後回しでいいだろう。 とりあえず今は、迷宮の絵を書いて欲しい。罠とか魔物の巣の絵とかは描けるか?」

「罠? 描けなくはないけれど……言っとくけれど解除の方法とかはわからないよ?」

「罠の種類がわかればいい。今まで一人で冒険者してたんだ、罠の解除とかはお手の物よ。 最悪、罠の場所だけわかれば引っかからないようにすればいいだけだからな」

「ふぅん……でも罠とか魔物の巣の絵なんて何に使うのさ?」

「罠と魔物の巣ってのは、冒険者がやられやすい場所だ。つまり、迷宮で死んだ冒険者たちのお宝が溜まりやすいんだよ」

「……なるほどねぇ。話を聞けば納得だけど、でもそんなに上手くいくのかなぁ?」

「なぁに、任せとけって」

ニヤリと笑って自分の胸を叩くルードの表情は羨ましいぐらいの自信に満ち溢れていた。

────────────それからしばらくして。

半信半疑ではあったが、言葉の通り絵を描いてあげた次の日は必ずと言っていいほどルードは大金を持ち帰ってきた。

いくら魔物の巣の場所や罠の場所がわかったところで、魔物は退治をしなければ宝は手に入らないし、罠も解除をしなければ自分が罠にかかってしまう。

どうやらルードは元々腕のいい冒険者のようであり、そんな彼の実力がこの街で認められるようになるのにそう時間は掛からなかった。


「へっへへ、見ろよ相棒‼︎ ゴールド級通り越して、今日から俺はプラチナ級冒険者だ‼︎」

「おめでとうルード。さすがだね」

「何言ってんだよ相棒‼︎ それもこれも、ぜーんぶお前のおかげだってーの‼︎ ほら、今夜はお祝いだ‼︎ めちゃくちゃいい酒買ってきたからよぉ、今夜はお前んところで飲み明かすぜぇ‼︎」

「別にいいけど……前みたいに酔っ払って窓ガラス割らないようにね」

「ははは、任せとけって相棒‼︎ 俺はもう、田舎もんで貧乏人の俺とは違うのだぁ‼︎」


「はいはい……ふふっ」

気がつけばルードは僕の家に入り浸り状態だったし、酔い潰れたルードを介抱するのも僕の仕事になった。

もちろん悪い気はしない。

ルードは酔っ払うと色々なことを話してくれた。

田舎での貧しい暮らしのこと。
貧しさのせいで妹が遠い村に売られてしまったこと。
両親を病で失ったこと……薬があれば助かったと貧しさを恨んだこと。

冒険者になったのはお金のためで、仲間に裏切られて死にかけて以来迷宮には一人で潜るようにしていること。

仲間に捨てられた僕と自分が重なって見えたこと。

彼のそんな話を聞くうちに、僕もすっかりルードを気に入っていたし、それはルードも同じだったのだろう。

街でルードが人気者になるころ、僕とルードはお互いを親友であると認め合う仲になっていた。