「園長~!桐谷静が来ました!」
その言葉に、張りつめていた空気が緩み一同ポカンとする。
「えっ?桐谷静ってピアニストの?なぜ?本物?」
「はい、それで、春花先生をご指名です」
「えっ!」
「春花先生、知り合いなの?」
「……ええ、まあ」
煮え切らない春花の態度に園長は首を傾げ、
「よくわからないけど、私が行ってくるわ」
と、颯爽と飛び出していった。
園長が何かやり取りしているのを、保育士たちは不安そうに見守る。だが、戻ってきた園長も先程の亜子先生同様に高揚していた。
「今からコンサートをします。遊戯室にみんなを集めて」
「えっ!」
「だっていくらでも弾いてくれるっていうんだもの。本物の桐谷静だったわ!」
「わあっ!すごい!」
ミーハーな園長に春花はポカンとしてしまう。
園内が盛り上がる中、春花だけは浮かない顔をしていた。