「……どうして居場所を知りたいの?あなたたち、別れたんじゃないの?」

「別れてなんかいないです。海外に行ったのも春花が背中を押してくれて……」

「そっか、あなたたちちゃんと話し合いをしなかったのね。山名さんもバカだわ。なんでも自分で背負いこむんだから。本当に困った子よね」

葉月はひときわ大きなため息をつく。そして静をまっすぐ見据えて事実を述べた。

「事件のことを嗅ぎまわっているマスコミが店に来たの。そのときは追い返したけど、自分のせいで桐谷静に迷惑かけたくない。汚点のない桐谷静でいてほしいんですって」

「春花が汚点なわけないじゃないですか!」

「そんなこと私だって知ってるわよ。だけど山名さんの気持ちもわかってあげて。桐谷静を誰よりも応援していたのは山名さんよ。だから自分の気持ちは押し込めて、あなたの背中を押したんでしょうね。それに山名さんの意思は固いのよ。悪いけど、私も山名さんと付き合いが長いのよ。私は山名さんの味方なの」

フンと鼻であしらい葉月は仕事に戻ろうとして、もう一度静に向き合う。