祝賀会は一部マスコミの入場も許可されており、主役の二人が壇上に上がることになっていた。

メイサは自然と静の腕に手をかける。静は振り払いたいのを我慢しながら、そのまま壇上までエスコートしていった。

わあっと歓声が上がり、「やっぱりお似合いよね」などという声が上がる。まわりに囃し立てられ気分を良くしたメイサはますます静にぴったりと寄り添った。

「ねえ、私たちもこのまま恋人になりましょう。二人ならきっと素敵な音楽が奏でられるわ」

「俺には恋人がいるって言ってるだろ」

「何言ってるのよ。これから海外公演が増えるのよ。日本に帰らないのに待っててくれるわけないじゃない。それにあの子、身を引くって私に言ったのよ」

メイサの発言に静の思考が一旦止まる。

「……どういうことだ?春花に会ったのか?」

「静の夢を邪魔しないでねって忠告してあげたの。おかげで海外公演も大成功よ。感謝しなくちゃね」

「ふざけるな。俺はもうメイサと弾く気はない」

「何言ってるの?これから私たちはもっと有名になっていくのよ。とても栄誉なことだわ」

「栄誉なんていらない。俺はそんなもの求めていない」

「じゃあ何で海外に来たの?有名になるためでしょ?私たちなら世界中に名を轟かせることができる。それの何が不満なの?」

「不満に決まってる!」

静は吐き捨てると、そのままメイサの元を去った。