久しぶりに静のコンサートが開催されるということで、春花は招待者として会場に足を運んだ。

今回はピアノとバイオリン、フルートのアンサンブルだ。自宅でピアノの練習をしている静の姿を何度も見てきた春花だったが、バイオリンとフルートが加わるとどんな音色になるのだろうとワクワクする。

やがて会場の照明が落とされ、奏者達が舞台に姿を現した。

静は黒のタキシード姿でいつも通り存在感を放ち輝いている。恋人の立ち姿が立派だと、なんだか春花が誇らしく嬉しい気持ちになった。

(やっぱり静はかっこいいな。……あっ!)

思わず息を飲んだ春花の視線の先には、フルート奏者である三神メイサがワインカラーのドレスを翻しエキゾチックな雰囲気でひときわ異彩を放っていた。

(あの人、前に静と噂になった人だ……)

思わず彼女を凝視してしまう。今日のコンサートがアンサンブルで、フルート奏者が三神メイサだと静から聞いていた。それに対して春花は何とも思わなかったのに、いざ彼女を目の前にすると少しばかり心が落ち着かなくなる。

彼女とはなんでもないと聞いているし、静の恋人は自分で愛されているという実感もあるのに、それでも気になってしまう心の弱さに自然とため息が出てしまう。

(存在感がすごいんだよね……)

メイサの自信に満ち溢れた表情からはフルートにかける情熱さえも読み取れるようだ。

ピアノ、バイオリン、フルートの綺麗な旋律はあっという間に観客の心を掴んでいき、春花の雑念も消え去っていった。