暖かいぬくもりに包まれているとすーっと心が落ち着いてくるのがわかる。春花は戸惑いながらも愛されていることを実感して胸が熱くなった。

「ところでさ、春花」

「うん」

「何で元彼のことは名前で呼んで、俺のことは未だに苗字なの?」

「えっ?」

「もしかして何も疑問に思ってなかった?」

「だって桐谷くんは桐谷くんで、なんか慣れちゃってて……」

「俺の名前知ってる?静っていうんだけど」

「し、知ってるよ!」

「じゃあそういうことで、よろしく」

「……せ、静?」

「……」

「な、何か言ってよ。恥ずかしいんだけどっ」

口元を抑えて黙ってしまった静に春花は真っ赤な顔で慌てて詰め寄る。

「いや……」

静は春花からふいと目をそらすと、

「……可愛すぎてどうにかなりそう」

とぼそりと呟いた。

「え、えええ~~~!」

お互い真っ赤な顔になりながら、恋人として一歩進んだことに胸をときめかせていたのだった。