仕事が終わった春花は迷わず静のマンションへ帰った。渡された合鍵でエントランスの自動ドア解除する。スッと音もなく開くドアは高級感に溢れており、エントランスの天井は高くクッション性の良さそうなソファーが優雅に出迎えてくれた。
自分のアパートとは違う感触は春花の心を幾ばくか緊張させる。玄関のドアさえも重厚な造りで力を込めないと開かなかった。
「た、ただいまぁ」
遠慮がちに呼び掛けてみるも、部屋はしんと静まり返っていて人の気配はない。
「お、お邪魔します」
そろりそろりと入っていくと、ピアノルームの扉が開いていた。そっと中を覗くと自動で照明が点き、春花はわあっと声を上げた。
部屋の真ん中に立派なグランドピアノが置いてある。照明が反射してキラキラと光っている様は、音楽室を彷彿とさせた。
そっと蓋を開け鍵盤を弾くと、ポンと体の芯まで響いてくるような重厚な音が鳴った。
「……トロイメライ」
高校のとき静と連弾した曲を思い出し、春花は微笑む。
まさかこんな形で静と再会するとは思っても見なかったが、昔と変わらない優しさは春花の心に安心感を与えている。
本当は静と音大に行きたかった。静と一緒にピアノを弾きたかった。もしもあの時一緒に音大に進学できていたら、自分はどんな人生を歩んでいたのだろう。
ピアノ講師としてかろうじてピアノは続けているが、静との実力は雲泥の差だ。
自分のアパートとは違う感触は春花の心を幾ばくか緊張させる。玄関のドアさえも重厚な造りで力を込めないと開かなかった。
「た、ただいまぁ」
遠慮がちに呼び掛けてみるも、部屋はしんと静まり返っていて人の気配はない。
「お、お邪魔します」
そろりそろりと入っていくと、ピアノルームの扉が開いていた。そっと中を覗くと自動で照明が点き、春花はわあっと声を上げた。
部屋の真ん中に立派なグランドピアノが置いてある。照明が反射してキラキラと光っている様は、音楽室を彷彿とさせた。
そっと蓋を開け鍵盤を弾くと、ポンと体の芯まで響いてくるような重厚な音が鳴った。
「……トロイメライ」
高校のとき静と連弾した曲を思い出し、春花は微笑む。
まさかこんな形で静と再会するとは思っても見なかったが、昔と変わらない優しさは春花の心に安心感を与えている。
本当は静と音大に行きたかった。静と一緒にピアノを弾きたかった。もしもあの時一緒に音大に進学できていたら、自分はどんな人生を歩んでいたのだろう。
ピアノ講師としてかろうじてピアノは続けているが、静との実力は雲泥の差だ。