調べていくうちに、学芸員の仕事を知った。



仕事を通して、資料や作品にふれることができる。美術館なら絵画をはじめとした美術作品と仕事をしながら過ごせて、館内のツアーガイドなども担当する。

他にも展示の企画をしたり、情報を集めたり。資料の収集や保存をしたり、広報活動をしたりなどもあるようで、さらに興味が湧いてきた。



資料の研究をおこなって論文を発表することや書籍、解説書にまとめることなどもあると調べていくうちに知って、まずは、学芸員の資格が取得できる大学に行こうと決めた。



詳しく調べて知識がついてくるうちに、自分のやりたいことが明確にわかってくるうちに、だんだんと楽しいという感情が高くなってくる。

無気力だった8月の頭はうそのように、夏休み終了を目前としたいまでは高揚感があった。



もちろん、大学に受かるかどうかや、受かった先で資格が取得できるか、就職につながるか、などは不安だ。

それなのに、確実に不安なのに、楽しい。

楽しいからこそとれなかったらって不安も大きくなってしまうループ状態なのだけど、さらに頑張ろうと思う。後悔したくないからと努力できるようになる。

そうして、後悔しないように、自分自身と向き合いたい。



綾くんも、同じ気持ちだったのかな。同じ気持ち、なのかな。



その夜、綾くんは雑談配信中に、「真面目な話してもいい? ちょっと照れるんだけど」と前置きしてから話し始めた。



「これから何かに挑戦し始めるひとって、俺の配信見てくれてるひとの中にもたくさんいると思うんだ。俺は、自分が後悔しないですむように、って考えて必死に生きてきたと思ってるんだけど、それって、俺ひとりだけじゃできないことだったとも思うんだ。まわりにいてくれてるだれかや、言葉として応援してくれてるみんなに助けられたな、って。コメント欄で『自分をもっててかっこいいね』って言ってもらえること、結構多かったんだけどさ。あれ、ほんとは、みんなが自分をもってる言葉を言わせてくれてたんだよ。だからほんとうにかっこいいのはみんなのほうで。でも俺、いまの自分に後悔してないよ。あー……とね、だから、みんなありがとう。みんなにたくさん助けてもらったよ。それと、みんなのことは俺が応援してる。いままでこんなにはっきりと、応援してるって言ったことなかったんだけどさ。今度は俺がみんなに、言葉で応援する番かなって。ほんとうにありがとう、みんな。あらたまって言うのは緊張しちゃって同じことばっかり繰り返してるけど、俺、みんなのこと応援してるよ」