
作品番号 1663230
最終更新 2022/03/23
なあ俺、悪魔と契約したかもしれん。
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わたしの余命は10年39日とちょっと。
楡は、余命が見えるようになっていた。
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「高良、あんさ、冒険っていくつになってもしたいもんだよな」
「うん?」
「俺のチャリの後ろ、乗ります?」
「……え」
「俺、高良に提案があんだけど」
「うん?」
「遺書、書かん?」
「……美味しい」
「全部美味いんだろうなあ、あの店のやつ」
「倒置法」
「ほめて?」
「勉強したのつかえてえらいね、って? いやだよ」
「途中まで、ほめてくれるかと期待したのに」
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開かれたくない、未来の自分の葬式。
ストレスで引き起こした、軽度の難聴。
形見のように思えてふれることのできない本。
見失った、桜の香り。
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