もうそういう関係には戻れないし、終わりだけど、はじまりの握手でもある。

わたしたちの新しい関係がはじまる。



終わりと始まりの握手、わたしの気持ちが全部こもった握手を交わす。

ぎゅっと強く握ると彼も私に負けないくらいの力で、痛いくらいの力で握り返してくれた。




もうこの距離には戻れないし、触れることもできない関係になるし、友達よりも、知り合う前よりも遠い距離になる。

別れるって、言葉以上に重いのだろう。



だから、本当は名残惜しいけれど、どちらからともなく手を離して、視線を合わせた。





「優陽くん、ありがと……う」
「紫苑、ありがとう」



最後に名前呼ぶなんてずるいと思う。何回も呼ばれた名前、もう呼んでもらえないかもしれない名前を最後に呼ぶなんてずるいと思う。


もうすきは言わない。
おたがいありがとうでいい。


私はただ「行って」と言う。


目が熱くなっているから、油断したら膜が壊れちゃうから、いまはまだだめだからはやく行ってほしい。