歓声。飛び散る汗。日差し。振動。音楽。土と潮の臭い。
日常とは異なる要素が一斉に交じり合ったそのただ中で、くらくらと眩暈のするような衝動にただ突き動かされていた。
この瀬戸内に浮かぶ島で夏フェスが行われるのは今回が初だった。
どこまでも突き抜けていきそうな気持ちの良い夏空の下で、ステージに設置された巨大なスピーカーから重低音が鳴り響く。
白く輝く太陽に熱された大気をびりびりと震わせる振動は、そこに集まった大勢の人々の体の芯まで震わせるかのように響き渡っていく。
観客は思い思いに体を揺らし、腕を振り上げ、脚でリズムを刻みながら真夏の音楽に浸っている。
橘 七海もその中にいた。