「先生、私お腹空いちゃったな、先生、夕飯はこれからでしょ、私も食べさせて、お願い」

「食欲あるなら、もう大丈夫ですね」

「なんか頭痛い」

「本当に、大丈夫?」

「先生、それじゃ、悪い女に騙されちゃうよ」

俺は二十歳の女の子に翻弄されっぱなしだった。

食事が終わって、久しぶりに楽しい時間を過ごしたと心がウキウキしていた。

このまま、返したくない、ずっと一緒にいたい、もう一人の俺が訴える。

二十歳の女の子の言葉を鵜呑みにしてどうするんだよ、彼女からしたらおじさんの年齢だ、冷静になれ、ちゃんと家まで送り届けろともう一人の俺が説教する。

そうだ、ちゃんと送り届けるんだ。

「真由香さん、家まで送ります」

さっきまで満面の笑みだった表情が曇ってきた。

「どうかしましたか」

「大我先生、私をずっとここにおいて」

「えっ」

びっくりしすぎて狼狽えた。