天才的ドクターの純愛、封印したはずの愛する気持ちを目覚めさせたのはさせたのは二十歳の彼女だった

そして、次の日、真由香と共に病院を後にした。

「大我、お父様のところに寄ってくれる?」

「わかった、揃って挨拶してないからな」

そして、真由香と俺は真由香の実家を訪れた。

「お父様、手術前に外出許可頂いたの」

「おお、元気そうで何よりだ、すまんなあ、病院に見舞いにも行けず」

「お父様が病院嫌いなのを知ってますから大丈夫です」

お父さんは俺に向かって声をかけた。

「大我くん、迷惑かけてすまんのう」

「いえ、大丈夫です」

「では、もう行きますね、一目お父様に会いたかったの」

「ああ、手術頑張れ」

「はい」

そして真由香の実家を後にした。

俺と真由香はマンションに向かった。

「真由香、今食事用意するから、シャワー浴びておいで」

「うん」

この時、真由香は俺との最後の夜と覚悟を決めていたことなど全く気づかなかった。

真由香はシャワーを浴びると、自分の部屋に入ってしばらく出てこなかった。

「真由香、俺、シャワー浴びてくるな、体調は大丈夫か」

俺は真由香の部屋のドア越しに声をかけた。

「大丈夫だよ」

シャワー浴びてリビングに戻ると、真由香はスマホを見ていた。

「飯食うか」

真由香はスマホの画面から視線を俺に移し笑顔を見せ返事をした。

「うん」

二人でたわいもない話をして、これが幸せって言うのかと改めて思った。

「大我、私ね、赤ちゃん欲しいんだけど……」

突然の真由香の言葉に驚いてしまった。

「えっ」

「大我、可愛い」

「おい、大人をからかうなよ」

「ごちそうさま」

真由香は立ち上がって食器をキッチンに運んだ。

俺は最上から真由香の様子を見るように言われていた。

名医と言われた俺が真由香のことになると、全く素人同然になって、ちょっとした変化にも気づかない、どうしようもないやぶ医者に成り下がってしまう。

真由香からのお願いは聞き入れていいものなのか、これから手術に挑む真由香の身体に、負担をかけることはどうなんだろうかと迷っていた。

俺は最上のスマホに連絡した。

「最上か」

「どうしたんだよ、俺、まだ病院なんだけど、真由香に何かあったのか」

「いや、真由香は元気だ、実は真由香に子供欲しいって言われた」

「へえ、じゃあ、これからお楽しみか?」

「真由香を抱いてもいいか」

「はあ?真由香はお前の奥さんだろう、なんで俺にお伺いたてるんだよ」

「そうじゃなくて、真由香の身体への負担を聞いてるんだ、手術前にどうかと思って」

「おい、お前はそれでも医者か、自分で考えろl

「分からないから聞いてるんだろ?」

「じゃあ、俺が真由香を一生抱くなって言ったら、お前はプラトニックを貫き通すつもりか」

「そんなことは言ってないよ」

「大我」

最上の声のトーンが変わった。

「妊娠は避けた方がいい、これから強い薬を使う時もある、妊婦じゃない方がありがたい」

「そうだよな」

「ただ、今晩張り切るのは問題ない、思いっきり真由香を抱いてやれ」

「あのなあ」

俺はスマホを切った。

寝室に行くと真由香は寝ていた。
疲れたんだな、その気満々だったのに、先に真由香が寝ちゃうとは、このこと最上に話したら笑われるな。

俺はそっと真由香の身体をずらし、真由香の横で眠った。

すぐ側に愛する真由香がいると思うだけで、心臓がバクバク音を立てた。

俺は中学生かよ。

朝まで真由香の寝顔を見て眠ることが出来ずにいた。

朝の光がさしこみ、俺は真由香を起こさないようにベッドからキッチンへ向かった。

朝食の用意をして、真由香を起こすため寝室のドアを開けた。

「真由香、朝だよ、起きて、支度したら病院へ戻るよ」

真由香は眠い目をこすりながら、起き上がった。

「えっ、朝?私ぐっすり寝ちゃったの?」

「どうだ、具合は」

「大我、どうして起こしてくれなかったの」

真由香は怒った表情で俺を睨んだ。

「よく眠っていたから、起こすとかわいそうかなって思って」

「これじゃ、何のために一晩マンションに帰りたいって許可もらったのか分からないじゃない、ぐっすり眠るためじゃないのに……」

真由香は目にいっぱいの涙を溢れさせて訴えていた。

「真由香、手術が終わって退院してきたら、いくらだって時間はあるよ」

「退院出来なかったら?」

「真由香、そんな事はないよ」

何を言い出すのかと驚きを露わにしてしまった。

「それに大我は側に私が寝ていても何も感じなかったんだ、そんなに私は子供?女性としての魅力ないの?」

「真由香」

俺がどれほど真由香を抱きしめたくて我慢していたか、何も感じないわけないじゃないかと心の中で叫んでいた。

「大我のバカ、出て行って」

真由香は布団をかぶり泣いていた。

「わかった、勝手にしろ」

俺の気持ちも分からずわがままを言っている真由香を突き放した。

子供なのは俺だな、真由香に対して怒ってどうするんだ。

でも、真由香の機嫌が良くなるように抱きしめてやる余裕が俺にはなかった。

俺が寝室のドアを閉めてキッチンに向かおうとした時、真由香はベッドから起き上がり俺の背中に抱きついてきた。

「大我、ごめんなさい、怒らないで、お願い」

俺は真由香の方に身体を向けて、ギュッと真由香を抱きしめた。

真由香は背伸びをして俺にキスをした。

俺も堪らず真由香の唇を激しく求めた。
背伸びしていた真由香は、俺の激しいキスに身体から力が抜けてのけぞった。

俺は真由香の腰を支えて、のけぞった真由香の首筋に唇を押し当てた。

「きゃっ、大我くすぐったいよ」

「あっ、ごめん」

「もう、大我ったら真面目なんだから」

真由香はそう言いながら、俺の手を自分の胸に触れさせた。

「大我」

俺は思いっきり自分の気持ちにブレーキをかけた。

このままだと真由香を抱いてしまう。

俺は真由香の胸に触れている自分の手をそっと下ろした。

「真由香、もう病院へ戻る時間だ」

「いや、病院には戻りたくない」

真由香は目に涙を溢れさせて訴えた。

「真由香、聞いて、真由香はもう俺の妻だ、手術を受けて健康を取り戻して、俺の子供を産んでくれ、これから永い家族としての時間を過ごすために我慢しなくちゃ」

「私はここに帰ってこれる?」

「当たり前だろ、最上が聞いたら怒り出すぞ、俺を信用しろって」

「わかった、病院へ戻るよ」

そして俺と真由香は病院へ向かった。
「真由香、おかえり、大我に思いっきり抱いてもらったか」

最上先生は相変わらずの態度だった。

私は最上先生にグチをこぼした。

「寝ちゃった」

「はあ?」

「大我ったら起こしてくれないんだよ、朝まで私の隣に横になって平気なんだよ、私はそんなに魅力ないのかな」

「大我は優しいからな、お前の身体を心配したんだろう」

「こんなに愛らしい妻が横に寝てたら、抱きしめたいって思わないのかな」

「真由香らしいな、自画自賛するとは」

「最上先生は梨花さんを毎日愛したいでしょ」

「そうだな、大我に抱いて欲しいなら早く元気になれ」

「うん」

私は手術を控えて毎日検査が続いた。

俺は内科の外来が終わると、真由香の病室へ向かった。

「真由香、大丈夫か」

「大我」

真由香は満面の笑みを見せた。

「顔色良さそうだな」
「うん、退院しようかな」

「何言ってるんだ、もう少しだから頑張れ」

そして俺は少しの間真由香とたわいもない話をしてマンションへ向かう、そんな毎日が繰り返された。

真由香の手術の日が近づいたある日、真由香の部屋を片付けてると、俺宛ての手紙を見つけた。

日付は一晩マンションに帰ってきた時の日付だった。

『大我へ、大我とはじめて会ったのはお見合いだったね、私はその時体調が悪く、毎日不安な日々を過ごしていたの。だけど、大我がお医者さんって分かって神様の巡り合わせだって思った。それにすぐに大好きになったの、絶対に大我と結婚するんだって思った。でも、体調はごまかしようがないくらいに良くないって自覚があった。一回目の手術後、もしかしてこれで私は元気になれるんだと希望を持てたけど、二回目の手術を受けるって聞いて私の人生はこれまでかと覚悟を決めた。大我と結婚出来て嬉しかったよ。最後の望みは大我に抱かれたい、いっぱい愛してほしい……』

真由香、それで一晩だけでいいからマンションに帰りたいって言ったのか。

だから、起こさなかったことをあんなに怒ったのか。

最後だなんて退院してきたら飽きるほど抱いてやる。

もう、絶対にお前を離さないと心に誓った。

愛おしさが溢れて、俺は早くに病院へ向かい、真由香の病室へ急いだ。

真由香は眠っていた。

俺は眠っている真由香にそっとキスをした。

真由香はびっくりして、俺を見つめた。

「大我、おはよう、どうしたの?」

「おはようのキスをしにきた」

「えっ」

俺は真由香の手を頭の上でクロスさせて、激しいキスをした。

真由香は思いっきり感じてる声を上げた。

俺は真由香への思いを抑えることが出来ず、はじめて舌を割り入れた。

「待って、息出来ないよ、大我じゃないみたいだよ、どうしたの」

「真由香の部屋で俺宛ての手紙を見つけた」

「やだ、もう見ちゃったの」

「俺は真由香の気持ちを全く考えないで、真由香の身体のことばかり気にしてた、医者としてはいいが、真由香の夫としては失格だな」

「そんなことないよ、私にとって大我はすごく素敵な旦那様だよ」