「彼とわかれたのは本当だけど、結婚の話は私も知らないことだよ」

「ごめん、何が本当で何が嘘なのか分からない、どうしていいか分からない、俺は情けない男だ」

俺は真由香さんに背中を向けた。

「大我先生、待って」

その言葉に耳もかさずに病室を後にした。

廊下には最上が立っていた。

「大我、わざとだろう、そんなに冷たく突き放して、それがおまえの中で正解なのか、お前はそれでいいのか」

「誰と一緒にいるのが幸せか、考えてあげるのが大人の男だ」

「じゃあ、俺は子供なんだな、好きな女は誰にも渡したくない」

「もう、いいんだ、放っておいてくれ」

俺はその場を去った。

好きな女は誰にも渡したくない、素直にそう出来れば苦労はしない。

私は何が起きたか分からないほど狼狽えていた。

彼にはちゃんと別れを伝えた、分かったと言っていたはず。

なのにどうして結婚なんてことになるの?

確かに大我先生に会う口実で、彼に振られて具合が悪いと嘘をついたのは事実だ。