「誰でも病気の時は心細くなるからね、ドクターが側にいれば安心を得られる、健康を取り戻したら、本当に側にいる人、必要な人がわかるよ」

「私の側にいて欲しいのは大我先生よ」

「それは錯覚だよ、退院したら、溝口さんとよく話し合って、幸せになってくれ」

「私を幸せにしてくれるには大我先生じゃないの?」

俺は彼女の言葉にはっきり答えることは出来なかった。

「退院したらお父さんの元に戻って、彼と結婚の準備を進めるんだ」

「私は退院したら、大我先生のマンションに戻りたい」

「ごめん、迷惑だ、真由香さんの面倒は見ることは出来ないよ」

「先生に迷惑かけないから、お願い」

真由香は俺の腕を引っ張って抱きついてきた。

俺は真由香を抱きしめたい気持ちをグッと堪えて俺から引き離した。

「真由香さんを信じることが、今の俺には出来ない、彼と別れたと言いながら水面下では結婚の話が進んでいる、俺はまた騙されたのか、まんまと若い子の言葉を鵜呑みにして利用されたのかと考えてしまうんだ」