俺は真由香さんのベッドに近づいた。

真由香さんは咄嗟に俺の手を掴んで自分の方に引き寄せた。

ベッドに倒れ込んで、顔が急接近した。

真由香さんは俺の首に手を回し、抱きついてきた。

「大我先生、すごく会いたかったよ」

俺は真由香さんの手を俺の身体から離した。

「大我先生、手術頑張れってキスして」

真由香さんは目を閉じて俺にキスを求めた。

俺は彼女の頬を両手で挟み、キスをした、彼女のおでこに。

「頑張れ、執刀医は最上だ、安心しろ」
「うん」

俺は真由香さんの病室を後にした。

いつだってそうだ、俺はいざとなったら勇気がない、情けない男だ。

真由香さんの気持ちを受け止めることが出来ない。

裏切られた過去が邪魔をする。

三年前山風孝子との恋愛がそうだった。

俺の患者として現れた孝子は、すぐに俺に近づいた。

付き合いが始まり、積極的な孝子との身体の関係はあっという間だった。

何も疑うこともなく、孝子との愛に溺れていた。