成長途中のため線は細いが、一八〇センチに届く長身。手足も長く、颯爽と歩く姿はさまになっていた。そして、その体の動きに合わせて、肩先でサラサラと揺れる絹糸のように輝くの金色の髪も、セイジュの美しさを更に際だたせていた。
「セイジュ様……」
一目で見惚れてしまいそうなその容姿に、通りかかる女性は皆、その場で足を止める。そして、彼の胸元にある薔薇を模ったラペルピンを目にすると、深々と頭を下げた。
さり気なく胸に付けられた薔薇は、小さくとも華麗で、威厳の光を放つのには十分な存在感を出している。
なぜならそのラペルピンは、王室直属の近衛隊『インペリアルローズ』の証だからだ。
だが、こうしてセイジュを心から認める者は、多分ごく少数であろう。もしかしたら、頬を赤めていた女性達のように、容姿の美しさにだけ注目をされているのかもしれない。
「ルーク・サージェント様」
カツカツと、見た目通りの高級素材で仕上げられたブーツの踵を鳴らし、向こうから歩いてきた男にセイジュはうやうやしく一礼をして挨拶をする。身に纏うものに違いはあるが、彼の胸にも同じ薔薇の証が輝いている。インペリアルローズの仲間だ。
だが、ルークはセイジュに一瞥をくれることもなく通り過ぎる。完全に無視したかのようにも思えた。
けれど、存在すら無いものとし平静を装っていても、視界に入ってしまったセイジュの姿に片眉だけが嫌悪するかのように反応していた。
「フン。調子に乗るなよ。貴様のなどがなぜインペリアルローズに選ばれたのか、理解に苦しむ。早く返上しろよ」
「そうだ。おまえなんかがいると品位が失墜する。不相応なんだよ!」
 先を行くルークを追いかけるのは、同じインペリアルローズの『仲間』である、アレン・フォールとエリック・デュラン。 
 出会いがしらになじられ、エリックには掴まれた肩をぐいと押された。ルークのようなインペリアローズとして選ばれし者の気品は感じられない。ギラつくような鋭い目つきでいつも格下の者、とくにセイジュを威嚇している。茶化すだけのものとは違い、心の底からの嫌悪は強い力として伝えられる。気を張っていても、セイジュはよろけるように壁へと追いやられた。冷たい石造りが頬にあたると、床に押さえつけられているような屈辱感で胸が締めつけられた。